精製プロセス図鑑

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同じ農園・同じ品種の豆でも、収穫したチェリーをどう乾かすか=精製(processing)で カップの印象はまるで変わる。果肉を洗い落としてから乾かすのか、果実ごと乾かすのか、 密閉タンクで発酵させるのか——精製は品種・テロワールと並ぶ「味の第三の変数」であり、 近年のスペシャルティ/品評会ではむしろ最大の差別化要因になりつつある。 ここでは4つの代表的な精製とその味の傾向を整理し、 さらにCup of Excellence(COE)入賞ロット6,000超のデータから、 精製のトレンドがこの20年でどう動いたかを見る。

4つの精製と味仕組み・味の傾向・背景

ウォッシュト Washed / Fully Washed / 水洗式 washed

仕組み
果肉除去 → 水槽やタンクで発酵させ果肉の粘液質(ミューシレージ)を分解 → 水で洗い流してから乾燥。豆そのものの素性が出る。
味の傾向
クリーン明るい酸透明感フローラル紅茶様
背景
中米・コロンビア・ケニアの伝統。水と設備を要するが再現性が高く、産地や品種の個性を「素直に」写す。長らく高級豆の標準だった。

ナチュラル Natural / Dry Process / 乾式 natural

仕組み
チェリーを果肉ごと天日/ベッドで乾燥させ、最後に果肉と豆を分離。果実の糖と酸が乾燥中に豆へ移る。
味の傾向
ベリー完熟果実ワイニー甘み厚いボディ強め
背景
水の乏しいエチオピア・イエメン・ブラジルの原初的手法。管理が難しく雑味と紙一重だが、丁寧に作ると華やかで甘い。近年「良いナチュラル」の再評価で急増。

ハニー/パルプドナチュラル Honey / Pulped Natural honey

仕組み
果肉は除くが粘液質を残したまま乾燥。残す量で White→Yellow→Red→Black と呼び分け、多いほどナチュラル寄りに。
味の傾向
蜂蜜キャラメル丸い酸ジューシー甘さと clarity の中間
背景
コスタリカが精緻化。ブラジルのパルプドナチュラルは同系統で、COEブラジルは大会自体がこの部門とナチュラル部門に分かれる。

アナエロビック/実験的発酵 Anaerobic / Carbonic / Experimental anaerobic

仕組み
密閉タンクで酸素を断って(嫌気)発酵。温度・時間・酵母添加・二酸化炭素圧などを設計し、狙った風味を「作る」。
味の傾向
強い個性トロピカルシナモン様スパイス発酵香ときに過剰
背景
2015年頃から品評会で台頭。品種やテロワールより作り手のレシピが前に出るため、賛否と議論を生む新しい領域。

データで見る — COE入賞ロットの精製トレンド

Cup of Excellence 入賞ロットのうち、精製が記録された年の構成比。「勝てる精製」がこの数年で変わってきた。

Washed Natural Honey / Pulped Natural Anaerobic / 実験的

出典: Alliance for Coffee Excellence / Cup of Excellence 公表結果。 精製カテゴリは自由記述を4区分へ正規化。トレンドは記載率50%以上の年のみ。 味の傾向は一般的傾向で、実際は農園・品種・作り手で大きく変わる。